某日、
『竜は動かず』の取材のために東北に向かった。
早朝の澄んだ空気、新幹線の窓の外はどんどんと雪景色に変わる。

午前11時現地到着。
快晴なのにちらちらと雪が降っている。
山から吹く強い風に、地面の雪が舞い上げられているらしい。

冷たい空気が喉を通り胸に抜ける。
もとから来る人も少ないのかもしれないが、
月曜日の観光地はその街の日常とともにあり、
そこかしこから静寂と雪のとけた水の音が聞こえてくる。

氷柱、ゆれる笹の影、板の床から伝わってくる冷たさ、
縁側の戸にもたれた時の頼りなさ、霜を踏む音。
かつて左太夫が歩いたかもしれない冬の道を歩いてみた。

頬の紅い高校生が下校していく。
公園で遊ぶ子供に次の行き先を尋ねる。
「どこだろう」「探してみよう!」そう言って走っていった。
「雪に滑らんようにねー」と声をかける。

立ち止まり、何度か空気を吸う。

宇都宮で餃子でも食べて帰ろうか。





普通でいるためにやるべきことがあまりに多い。




年が明けた。
まったく実感がない。
そして年男らしい。なにをするのだろうか。

初詣に友人と高尾山に登った。
薬王院に詣で、山頂で初缶ビールをあける。

どうかいいことだけがありますよう。



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